潤は後ろからぎゅっとアドニスを抱きしめた。
「なんとかしてよ……俺も苦しいんだ」
体を密着させて擦り合わせるようにした。アドニスだけじゃない。自分もしっかりその気になっている。
抱きしめている手を少しづつ下へ這わせるとアドニスの手が腕を掴んでくる。
「潤っ」
背を向けたまま非難するような声を出す。
構わずに、柔らかい茂みの中の熱いものをそっと手で包んだ。
「いいじゃん、二人ともその気になってるんだから」
ゆっくりとアドニスのものを扱く。手の中でそれは更に熱を持ち、反対に腕を掴んでいる手は力を失っていくようだった。
「じゅ……ん……」
アドニスが苦しげに声にする。その声には甘い息が絡んでいて潤には煽っているようにしか聞こえなかった。
潤が体を起こしてアドニスの体を仰向けると、アドニスは潤を見上げ苦しげに目を細める。手はぎゅっとシーツを掴んでいた。
アドニスを組み敷いて、
――――さて、どうしよう。
潤は喉をごくりと鳴らした。
抵抗はしないまでも、アドニスが積極的になるとは思えなかった。
どうする? どうできる? このままやめる? それは嫌だなと思う。
ええい、ままよ――――。
潤はアドニスのものに手を添えると、その上に腰を下ろそうとした。
濡らさないといけないとは聞いたことがある。慣らさないとマズイという話も聞いたことはある。アドニスもそうしていた。けれどやらなかったら実際どうなる かはよく分かってはいない。この間は入ったんだから大丈夫なんじゃないかと思った。入れりゃそのうち馴染むんじゃないかと思った。
やったこともないのに、アドニスにそのまま突っ込むことは躊躇われた。
「だめだよっ」
アドニスの声と共に、体は宙で止まった。抱きとめられたように体は運ばれて、アドニスの横に静かに下ろされる。支えられていたものがふっと消えて後ろに倒 れそうになって潤はベッドに手をついた。
何をしても乱暴にはしないらしい。悔しいけれどそれだけの力があるから余裕があるのだろうと思った。
「無茶だよ」
アドニスが頭を振る。
「じゃあ……なんとかしてよ」
熱を持っているのはお互い様だ。吐き出したいと思っているはずだ。しばらく見詰め合っていた。
アドニスがどうでるのか、潤はうかがっていた。
ゆっくり起き上がったアドニスは、潤の寝衣に手を差し込むと熱に触れた。そのまま顔を近づけると口に含む。
「んっ……」
あの時もそうやってくれた。
ゆるく立ち上がるそれをアドニスの舌が撫でる。すぐに熱を増し堅く存在を主張するそれをアドニスは丁寧に口で扱いていく。
抵抗することを諦めたのかな、と思った。表向きもう何も訊かない約束はした。一応安心したはずだ。
「アドニス……」
上下するアドニスの頭に触れ、髪の毛を手に絡めた。一瞬動きを止めたアドニスが、また同じ動作を繰り返す。
「もう、いいよ……そうじゃなくて……」
こうして欲しいわけじゃなかった。確かに気持ちよくて、やめてくれとは言えないけれど、もっと気持ちいいことを知っている。
「アド――――……っ」
急に強く吸われて、ぞくっとした体は仰け反っていた。やめるつもりはないようで、アドニスの動きが速くなっていく。
アドニスの動きに合わせて体が揺れる。意識が全て下半身に持っていかれているようだった。
「あ、ちょ……で……っ」
体が強張って声がうまく出せない。もう、頭の中は諦めていた。
体の中を突き抜けていくような開放感の後、耳には自分の息遣いが響いていた。
別に何かしたわけじゃないのに、体は熱く肌がじっとりしている。吐く息もトラックを全力疾走した時くらいに荒い。
「これで……いいでしょう?」
起き上がったアドニスが手の甲で自分の口元を拭う。
お前は?
そう言いたかったけれど、潤は言葉がでなかった。
すっと背を向けたアドニスに、潤は一人放り出されたような気持ちになった。自分はしたくなかったけれど仕方ないから付き合ってやったんだと背中が言ってい るような気がした。
それは違うだろ、と思う。
確かに、熱を持っていたはずだった。
「よくないよ」
アドニスを抱き込むようにして下腹部に這わせた手はアドニスを掴まえた。
「これで、いいわけないだろ」
アドニスと同じように、潤もアドニスのものを口に含んだ。しっとりと濡れているそれを、丁寧に拭うように撫でる。
「じゅん……やめ……」
アドニスの手が頭に触れたけれど、それは、髪の毛を掴んだだけで力が抜けていくのが分かった。
男のものを口にしたのは初めてだった。考えたこともないことだった。
「じゅん……」
アドニスが体を捻って逃れようとする。
手でしっかりとアドニスのものを掴むと口を離した。
「慣れてないんだから、大人しくしていろよ。噛み切られたくないだろ」
そんなつもりはないけれど、やったことがないのだからどうなるのか自分でも分からない。
「そ――――っ」
文句を言われる前に、また口に含んだ。
良いわけがないと思う。このまま寝れるわけないだろ、とも思った。同じ男だから分かる。ゆっくりと扱き上げると、それはすぐに反応を返してくる。
アドニスにされたことは自分でやるよりずっと気持ち良かった。同じようにできる自信はないけれど、やられっぱなしじゃこっちも寝られない。
吸い込みながら扱くと、アドニスが小さくうめく。間違ってはいないんだよな、と思った。
優しく、でも強く。先端をくすぐるようにしたり、舐め上げるようにしたり。熱くなってきて、じっとりと濡れてくることが嬉しかった。
「あ……っ……潤……」
アドニスの足が落ち着かないようにシーツを滑る。張り詰めたものは、もうすぐ落ちるだろうと思った。
「じゅ……っ」
アドニスが苦しげな声を出し、体を引こうとする。強く吸い上げると口の中で震えたそれは苦味を感じた。ごくりと飲み干して顔をあげると、アドニスが苦しげ な顔で小さくかぶりを振る。
そんな顔するなよと思うと同時に、潤は自分の変化に気がついた。自分の体がアドニスのように柔らかい光を放っていた。


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