潤はぼんやりとアドニスを見ていた。
「驚かないの?」
アドニスが不思議そうな顔をする。
「え、どうして?」
寝起きの頭はまだはっきりしない。
「僕を見て、驚かないの?」
「どうして?」
「だって、地上にはいないだろ。光る人種なんて」
「あ……うん」
きれいだと思っただけだった。
「それでも、驚かないんだ」
「あ、ん、そうだね」
なんでだろう。自分でも分からない。
光の粒がアドニスを覆っているようだった。夜空に光る星のようにきらきらと透明な光が輝いている。
アドニスがふっと笑った。笑顔がきらきらと光る。
「まるで、他人事みたいだね」
「そうかな」
頭がまだ夢の中にいるのか、アドニスを自分とは違うと思いながらも驚きも恐怖もなかった。
「でも、きれいだから」
潤が手を伸ばすとその手はアドニスに掴まれた。印象そのまま温かいアドニスの体温を潤は掴まれた手に感じた。
「そう言ってくれると、うれしいよ」
潤の手を掴んだままアドニスは手を頬へと持っていく。
滑らかで柔らかいアドニスの頬に触れ潤は思わず手を引こうとした。けれど、アドニスに強く握られて手を引くことはできなかった。
「いや?」
アドニスが切なげに顔を歪める。
「いや、そういうわけではなくて……」
確かに触れたいと思って伸ばした手だった。けれど、現実に触れてしまうと不安になった。高い身分をもつアドニスにこんなに簡単に触れてしまっていいのだろ うか、と思う。
「なら、逃げないで」
アドニスが潤の手を口元を持っていく。唇に触れてしまったことで、潤ははっとした。
「あ……アドニス……」
「何?」
手に触れているアドニスの唇が動く。
夜も深いと思われる時間他人の寝室へ来る意味をはっきりしてくる頭が投げかける。それはひとつしか思い当たらなかった。
「俺、男だから……」
残念ながらというべきか女の性は持ち合わせていない。
「だから?」
「だからって……」
その先の言葉を躊躇う。相手にはならないということをアドニスは分かっているはずだ。
「神獣は最高の人を選んでくれるそうだよ。もちろん、そういう意味で」
そういう意味?
その言葉の指す意味もひとつしか思い当たらない。
たとえそれが本当のことだとしても、男同士で手違いで連れてこられただけだ。どう応えたらいいのか潤は戸惑っていた。
「確かめてみたいと思わない?」
アドニスが口元を緩める。きれいな笑顔は否定の言葉を封じた。

近づいてくるアドニスの顔に潤は目を閉じていた。触れた唇は柔らかくて、そのまま角度を変えて深く合わせてくる。
嘘だろ? ちょっと待てよ――――そう心の中では思うのに、潤は触れてきた舌先に応えていた。くすぐるように触れられて、頭の中が掠れていく。
潤にとっては初めてのキスで、相手は男なのに嫌悪感はなかった。
「ん……」
口内を撫でるようにされて声が漏れる。ふと気がつくと、潤は手をアドニスの首に回そうとしていた。力を抜くと手はそのままベッドに落ちて、代わりにシーツ を握りしめた。
これからどうなるのだろうと思いながら、抵抗はできずにいた。
高い身分をもつアドニスへ逆らうことをためらうだけではなく、次第に熱をもってくる体が拒むことを嫌がっていた。
「嫌なら言って。無理矢理やろうってわけじゃない」
耳元で囁いた唇が首筋を降りていく。
「あ……でも……」
いいのだろうか、と思う。
男同士でも体の関係が成り立つことを知らないわけじゃないけれど、そんな経験はない。
好奇心がないわけじゃない。
一応男なのだから、気持ち良いことならやってみたいとは思う。
けれど。
興味本位っで覗いた雑誌でちらっと見た程度の知識しかない。二人とも男なのだから、どちらかが女役になるわけで、それって?
「嫌?」
アドニスの唇が肌を這う。
合わせから手を入れて手が肌を撫でる。
「そういう……訳じゃなくて……」
触れられることが心地よかった。
「そう、良かった」
アドニスが顔をあげて笑った。
完敗だと思う。この笑顔には敵わない。

いいのかな――――そう思いながら、潤は恐る恐るアドニスの背中へ手をかけた。寝衣の上から背中を撫でて、どうすればいいのだろうと思う。
「脱がせてよ」
アドニスがおどけたように言う。
いいのかな、そう思いながら背中に手を入れると、アドニスが身につけていたものはするっと滑るように下へ落ちていった。
アドニスが抱きしめるように体を絡めてくる。潤は自分が光に包まれているような気がした。
アドニスのものを下腹部に感じて体の奥が疼く。
「感じてくれてるんだ……」
アドニスの手が潤のものに触れる。
「あっ……」
体を硬くして潤が零した小さな声に、またアドニスは笑った。
「硬くなることはないよ。大丈夫、そのままにしてて気持ちよくしてあげるから」
ふいに起き上がったアドニスは、潤のものを口に含んだ。


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