イチゴショートケーキ



 駅のバスロータリーの真ん前にあるケーキ屋には、舌をべろんと出した女の子が看板娘をやっている。雨の日は店の中に入っているけれど、それ以外は店が開 いているときはいつでも、何か良からぬことを考えているような笑顔を振りまいていた。

 圭太は年に一度、その店のお世話になっていた。
 小学六年生のときから続いているプレゼント交換。
 ただ、思いついたように和哉が奢ってくれたから、それを圭太が返して、それにまた和哉が返して、なんとなく終わらせられずにいる。
 圭太はおでんの大根とちくわぶ。
 和哉はイチゴショートケーキ。それも、駅前のケーキ屋で、スポンジの間に挟まっているのはイチゴという限定付き。スポンジの間が桃の缶詰じゃいやらし い。誕生日だけのちょっとした贅沢だ。
 冬生まれの圭太とは正反対。和哉は七月十二日生まれの蟹座だった。
 和哉の誕生日には、イチゴショートケーキをひとつ買って、和哉の家で食べる。
 圭太はケーキが苦手だった。甘いお菓子よりご飯の方がいいと思うタイプで、おやつというと、おにぎりなんかを食べていたりする。その隣で和哉はシューク リームを食べていたりした。
 だから、和哉が「食うか? 」と言ってくれる一口だけで圭太は十分だったりする。
 しかも、間接キスだし。
 きっと、そんなことでどきどきしているなんて、和哉は知らないだろうと思う。
 そして、圭太は毎日見るあのケーキ屋の看板娘を見ると、そのことを思い出したりしていた。

 圭太としては和哉の好きなものは好きになりたいと思うのに、得てして結果は逆だったりする。
 和哉の好きなグラビアアイドルは好きになれないし、大好物のイチゴショートケーキも苦手な部類だ。ファーストフードでもファミレスでも同じものをオー ダーしたことがない。
それでも、和哉の隣にいるのが自分ではなくなっても、近い存在でいたいと思う。

「ずっと、友達だよね」
圭太は、今は隣にいる和哉に訊いた。
「当たり前だろ。俺の結婚式の司会はお前にやってもらうんだから」
当たり前のように返ってきた答えは圭太が考えもしないものだった。
「いつの話だよ」
近い将来ではあって欲しくない。
「そのうち、あるもんだろ? 」
それは、そうかもしれない。
「そうだといいね」
ちょっと意地悪が言いたくなった。
「あるさ」
自信ありげに言う。
もしそんな時が来たら、和哉の隣に立つ人を好きになれたらいいなと圭太は思った。


Fin.

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