コンビニおでん



「お前、ホント好きだな」
 呆れたような顔をして、和哉が言った。
「いいだろ、好きなんだから」
 圭太はあつあつの大根をふーふーしながら一口、頬張った。

 コンビニの駐車場の車止めに座り込んで、おでんを食べるのが圭太の日課になっていた。日課と言っても季節限定。やっと、待ちに待った季節がやってきた。
 正直寒いのは苦手だけれど仕方ない。一口食べただけで体は温まってくる。
「飽きないのか? 」
「飽きないよ」
 飽きるわけがない。
「たまにはメニュー変えようとか思わないわけ? 」
「思わないよ」
 大根とちくわぶのコンビ。これに意味がある。
「ふーん」
 和哉はコンニャクをかじっていた。ダイエットだとか言っている。

 人の気も知らないで。
 今でさえ女がうるさいのに、これ以上カッコよくなってどうするつもりなんだか。
 涼しげな顔立ちっていうのだろうか、視線が鋭くて、きりっとしてて、間近で見つめられるとどきっとする。
 そんな気持ちもきっと分かってくれてない。
 でも、きっと、それはその方がいいんだ。

「どうする? 」
 和哉がコンニャクがささってた串をゴミ箱に放り込んで聞いてくる。
「うち来る? 」
 ちくわぶを頬張りながら圭太は言った。答えるように、にやっと和哉が笑う。
「兄ちゃんの蔵書増えてる? 」
「ああ、この間もなんか買ってきてたみたい」
「よしっ!」
 和哉はガッツポーズなんか作っていた。

 兄の良太と和哉は趣味があうみたいで、同じグラビアアイドルが好きだったりする。
 たまたま和哉が遊びに来てたときに良太がいた時があって、その話で盛り上がって、良太が自分の蔵書(好きなグラビアアイドルが出てる雑誌や写真集)を自 慢なんてするから、和哉は飛びついた。
 しつこく見せてくれと頼まれてしぶしぶ良太は了承した。
「大事に見ろよ」
と厳しく言っていたけれど、趣味があうのは嬉しいらしい。

 結局、今日もよだれを落とさんばかりの表情で写真集にかぶりつきになってる和哉をイルカのぬいぐるみを抱きながら、眺めていることになりそうだと圭太は 思った。

圭太がちくわぶを口の中に収めると、和哉が手を出してきた。串ののったトレーを出すと、受け取ってゴミ箱に捨ててくれる。ついでに、手を引いて立ち上がら せてもくれる。
優しい和哉。
でも、覚えてるわけないよな。
12月に来る誕生日。
和哉が初めてくれた誕生日プレゼントがコンビニのおでんで、それが大根とちくわぶのコンビだったなんて。
「何がいい? 」
そう聞かれて、リクエストしたのは自分。
でも、和哉から手渡されてすごく嬉しかった。
小学校六年生だったあの時から、もう四年が経つ。
はっきり自分の気持ちを自覚したのは、中学生になってからだった。あの頃は早く大人になりたいと思ったのに、今は違う。
和哉の隣にいるのが自分でなくなる日が来るのはいつだろうとびくびくしている。
そんな気持ちも全然分かってくれなくて。
「早く、行こうぜ」
どきっとするような笑顔を見せてくれる。
「うん」
だから思う。
――――いつもの帰り道が永遠に続けばいいのに 


Fin.

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