部屋のドアを開けると、バスタオルを頭から被った裕太がベッドの上に座っていた。
汗かいてるだろ、と先に裕太を風呂へ行かせた。裕太が帰ってきてから自分も風呂へ行った。昔は二人でよく入ったものなのに、二人で入ったらそのままではす まない気がした。
事実、今、隆の心臓はどくどく言っていた。裸で向かいあって、体を洗っておしまいなんてことはなかった気がする。
隆に気づいた裕太は、バスタオルの隙間から不安そうな顔を覗かせていた。
「スポーツ飲料もってきてやったぞ」
隆がペットボトルを放ると、裕太が手を伸ばして受け取った。弾みでバスタオルがするっと裕太の頭から滑り落ちた。貸した隆のパジャマは裕太には少し大きく て袖は指先しかでていない。
まだ少し濡れている髪の毛に隆はどきっとした。
「ありがと」
裕太は小さく笑うと、ペットボトルを開けて一口ごくりと飲んだ。喉が動く様にも、心が揺れる。
落ち着け、そう自分に命令しながら隆は裕太の隣へ腰を下ろした。
顔を向けた裕太の瞳が濡れて小さく揺れていた。
我慢できなくて、腕を回すと唇を塞いだ。
「ん……」
裕太が息を漏らす。
その声さえ下半身を刺激して、隆は唇と離すと裕太の手からペットボトルを取り上げて机に置くと、裕太をベッドに押し倒した。
見上げてくる裕太の瞳は光っていてきれいだった。
「たかちゃん……」
呼ぶ声は震えていた。
「ん?」
「電気消して」
言いながら視線を伏せる。
「いや? 嫌なら何もしない」
裕太は視線を伏せたまま頭を振った。
「明るいのが嫌なだけ……全部、全部見られちゃうのは、嫌だ」
顔を横に背ける。
その顔を頬に手をあてて自分に向けた。
「なんで? 」
「だって……嫌われたら嫌だ。たかちゃんに抱かれたら、どうなってしまうのか、自分でも分からない。だって、もう……」
「もう?」
「もう……」
裕太が視線だけは避けるように、伏せる。
隆はそっとパジャマ越しに裕太の下半身に触れた。薄い布を通して高ぶりが分かる。裕太が体を捻るように、身じろいだ。
「俺だって同じだ」
隆は裕太を抱き寄せるように体を重ね、自分の下腹部を裕太に擦りあわせた。何もしなくてもその先を予測して体は熱くなっていた。

「だから……」
隆は裕太のパジャマのボタンへ手をかけた。
「嫌いにならない? 」
裕太が不安げに見上げてくる。
「なるかよ」
唇をちゅっと啄ばんだ。
「絶対だよ」
裕太も隆のボタンへ手をかける。
「ああ、絶対だよ」
言いながら、ボタンを外しながら、なんでそんなことを不安に思うのだろうと隆は思った。
一度は自分から抱いてくれと言ってきたのに。

互いにボタンを外しあい胸が露になると、隆は自分の上着をベッドの下へ放った。
そっと裕太の肌に触れると、裕太の体がぴくっと震えた。唇を啄ばみながら、手は肌を這い、胸の突起を摘んだ。
「んっ……」
裕太が喉を鳴らす。
手の中で転がすと、今まで柔らかくて頼りなかった存在が主張するように硬くなった。裕太の体が自分の腕の中で変わっていくことを隆は感じた。
手を伸ばして引き出しをあけ、中から紙袋を出すと、その中のローションを出した。初めての体は容易く受け入れてくれないだろうと思う。その体を傷つけたく はない。
下着ごとズボンを脱がせると、手にローションを取り裕太の敏感なところをそっと握った。
「たかちゃん……」
裕太が背中へ腕を回ししがみついてくる。
「何? 」
答えながら擦りあげると、裕太の体がぴくっと震える。
「いいよ……あ、……僕はいいんだ」
額を胸に押し当ててくる。
「そんなわけにはいかないだろ」
自分だけがイけばいいわけじゃない。
「だって……嫌でしょう? んっ……、」
裕太が顔が歪めた。
「何? 」
丁寧に裕太のものを扱いた。自分と同じでものであるはずなのに、まるで違うもののように思えた。
「だって、僕は女じゃなくて……」
裕太の声が息で消されていく。
「だから? 」
「……同じだから……」
弱弱しい声を出しながら、裕太の手が背中から降りて肩を掴む。
「好きだよ、全部」
隆は内股へ手を滑らせて、窄まりを撫でた。
「あ……」
裕太が小さく声をあげる。
指を差し入れると、中は温かい湿り気をもっていた。
「たかちゃん」
息を吐くように裕太が呼ぶ。
「ん? 痛い? 」
そこは本来は受け入れるべきところじゃない。 
「ううん」
裕太が頭をふる。
「じゃあ、何? 」
差し入れた指で裕太の中を探った。中は広がっていても、入り口はきつい。解さなければ繋がることはできない。
「本当にいいの? 僕で 」
「当たり前だろ」
額を付き合わせ、隆はそのまま裕太の唇を啄ばんだ。柔らかい唇が答えてくれる。
大好き――――そう答えた口が動いた。
隆はもう一度唇を啄ばむと、首筋に唇を這わせた。しっとりした肌は唇にすぐなじむ。胸の突起を唇に含むと裕太が喉を鳴らし、裕太の中を探る指をきゅっとし めつけた。そのまま唇で胸の突起を舌で転がしていると、指を締め付けていたところが緩んできて、裕太の息遣いも荒くなってくる。
隆は指を増やして、中をかき回した。
「んっ……、あっ……」
裕太は不安げな顔をしながら、小さな息を漏らし、体をぴくりと震わせる。熱で温まったローションは動かす指にあわせてぴちゃぴちゃと湿った音をたてた。ゆ るく立ち上がっている裕太のものがふるふると震える。
裕太の不安げな顔は苦しげに歪み泣きそうになる。
「辛いのか? 」
隆は裕太の前髪を梳き上げた。
「欲しい、たかちゃん……」
裕太は足を自分から開いた。
「ん」
隆は指を引き抜くと、裕太の腰を少し持ち上げて、自分のものを押し当てた。くっと先を少し入れると、裕太の顔が更に歪んだ。
「大丈夫か?」
隆が声をかけると、裕太が頷く。
ゆっくりと隆は自身を裕太の中へ埋め込んだ。襞がひきつりながらも、そこは隆のものを飲み込んでいく。裕太はシーツを握り締め、痛みを逃がすかのようには あはあと小さく息をしていた。
すべてを収めて、隆は裕太の上で裕太の息遣いを聞いていた。はあはあと悲痛にさえ聞こえた息遣いは次第にゆっくり落ち着いてくる。
「動くよ」
隆が言うと裕太が小さく頷いた。
ローションを少し足して、隆は腰を動かした。ゆっくりと裕太を気遣いながら、抽迭を繰り返す。始めはきつく締め付けてくるだけのように感じたそれは、その うち、快感へと変わっていった。
苦しげにさえ見えた裕太の顔も、上気した頬と濡れた瞳に艶っぽく感じた。裕太を気遣っていたはずなのに、いつの間にか隆は自分の快楽を追っていた。
動きは速くなっていき、手には裕太ものを握っていた。
「あ、あ……たか……っん」
裕太がかぶりを振る。
「苦しい? 」
言葉をかけながらも、隆は止めることはできなかった。
顔を歪めながら打ち付ける隆に答えるように裕太も動いた。
「ぁっ――――」
小さな声をあげると、隆の手の中で熱を吐き出した裕太の体はぐったりと沈みこんだ。
きゅっとしめつけられて、隆も裕太の中へ欲望を放った。体の支えを失ったように崩れ落ちる体を隆は肘をついて支えた。
自分の荒い息が耳の奥で響いていた。頭上では裕太も荒い息を吐いていた。上下する胸に、自分の額から流れた汗が落ちる。そっと触れた裕太の肌も汗ばんでい た。胸に頬を寄せると石鹸の匂いとともに、裕太の匂いを感じた。
感じると安心する裕太の匂いだった。
離したくないと隆は思った。
「たか……ちゃん」
裕太が腕を首に絡めてくる。
「ん? 」
声を出すのさえ辛かった。
「たか、ちゃん」
裕太がぎゅっと腕に力を入れる。苦しいと思いながらも、やめろとは言えなかった。規則正しく動く裕太の心臓の音はいつもより早く感じた。
可愛いと思っていた。愛しいとも思った。そして、今は離したくないと思う。
裕太の嘘はすべて暴いたくせに、自分だけ誤魔化しているのはずるい気がした。
隆は裕太の首に腕を回し顔を上げて唇に軽く触れた。
大切にするから、許してくれよ。そんな都合のいいことを思う。
でも。
――――いつか、答えてやるよ
裕太を抱き込みながら隆は心の中で呟いた。

いつから? という問いに――――。

Fin


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