放課後
「智〜」
窓際の机に肘をつき外を眺めていた智に気がついて、校舎の脇の通路を歩きながらちょうど教室の前を通った俊介が、手をあげて合図してくる。
智にとって木曜日だけが俊介と部活動の重なる日だった。
通常の活動は週二回だけという智が所属している地学部がサボっているだけなのだが、文化祭の前だけ忙しくなる程度で、普段は特に何もすることがない。星を
見るのは夜だし流星群とかのイベントがあるときで、化石発掘なんてそんなに行けるわけじゃない。たまに有志で行く程度だ。で、何をするかと言えば、星を見
に行ったり、化石を発掘に行く計画を立てたり、天気予報について話をしたり、地震や地震の予知について研究してみる? とか言っていたり、気楽なのが取り
柄のような部だった。
毎週この日だけは、バレー部で週四回部活がある俊介と一緒に帰ることができる。
もちろん二人きりじゃなくて、バレー部のやつやクラスのやつが一緒だったりするけれど、智にとっては集団デートみたいなものだったりする。
ラーメンを食べに行ったり、牛丼を食べに行ったり、ファーストフードへ行ったり。
結局、食べて話してお終いだけれど、一緒にいるだけで楽しい。
それも、俊介はいつも隣にいる。
『食う?』
そう言って俊介はいつも自分が注文したものを差し出してくる。その代わりといってはなんだけれど、もらった分の倍以上が俊介のお腹に収まっていたりする。
食が細くてラーメン一杯は食べられなかったりする智にとって、俊介はありがたい存在でもあった。
『お前らはワンペアだな』
とか言われたりして。
からかわれているのは分かっても、俊介だからいいやと思う。
でも、ひとつだけ。
そう智は思う。
今でも背が伸びている俊介に、これ以上あまり高くなって欲しくない。
いつまで隣に居られるのかは分からないけれど、いつか来るだろうその日まで、できるだけ近い距離で見ていたい。
そんな智の心の中を知るはずもなく、隣でビッグマックにかぶりついた俊介は、そのままにっこりと笑った。
また、その笑顔に智の思いが膨れ上がっていく。
無限大にも思える心の中は、いつか俊介に占領されてしまうんだろうな、とまだ一口も食べていない照り焼きハンバーガーを手に智は思った。
Fin