答えは?
桜の花びらがひらひらと舞っていった。
「えっと……」
目の前のやつは、少し顔を伏せ、頭をかきながら、困ったような顔を見せていた。
「えっと……」
同じ言葉を繰り返す。これで、ちょうど十回目だ。
「えっと……」
「十一回目」
声をかけると、目の前のやつははっとしたように上を向いた。くりっとした普段でも丸い瞳が更に丸くなってこちらを見てくる。
「巧、早く言えよ」
拓也は急かした。これじゃあ、いつになったらこいつの言いたいことを聞けるかどうか分からない。
「好き? 嫌い? どっち? 」
答えやすいように、選択肢をつけてやった。
嫌いなんて選択肢を選んで欲しいわけじゃない。
けれど、どきどきするのも飽きてきた。
ちょっと話があると呼び出して、好きだと告白したのは五分くらい前か。最初の言葉を聞くまではどきどきしていたのに、巧はしどろもどろに「えっと……」と
言葉を繋ぎ、そのうち頬が染まりだし、今は耳まで真赤だ。
どっちが告白してるのか、分からないような状態になってきた。
「えっと……」
つけた選択肢はまったく無視されてしまった。
「じゃあ、俺が決めてやるよ」
「え?」
巧が初めて違う言葉を口にした。
「お前は俺を好き。それでOK? 」
もう、問答無用だ。
「う、うん……」
小さな声で頷くと、耳を真赤にしたまま、巧はまた顔を伏せてしまった。
いつもはこんなにはっきりしないやつじゃないのに。
元気にころころよく笑って、言いづらいこともはっきり指摘してくるのに。
「なら」
拓也は一歩巧に近づくと、指をあごにかけて上を向かせた。
巧の瞳が不安げに揺れていた。
唇を塞ごうとして、触れる直前に、
「好きだよ」
もう一度気持ちを伝えた。
「本当に?」
小さく掠れた声が問い掛ける。
答える代わりに、唇を塞いだ。
風が体を撫でるように吹いて、桜の香りが鼻を掠めた。
Fin.