キャンデー

昼休み、雅紀が読んでいた本から顔を上げるといつからそこにいたのか真哉が横向きで前の席に座っていた。
声をかけるより先に、すっと手を目の前に出してくる。
「返事は? 」
かけてくる声はぶっきらぼうで。
雅紀はポケットからキャンデーをひとつ出すと、真哉の手の平に乗せた。
「これだけ?」
真哉が怪訝そうな声を出す。
自分はチョコ一粒だったくせに、不満らしい。
「欲しい?」
聞いてみた。
返事はくれと言ったくせにこの一ヶ月めちゃくちゃ避けられて、二人きりになるチャンスは無かった。
それまではよく図書室で一緒に過ごし、本を読んでいる横で昼寝なんてしてたのに、ぱったりと、あれは告白だと思ったのは間違いかと思うほど避けられて、で もそれは、答えはまだ言うなよ――そう言っているのだと思うことにした。


「当たり前だろ」
ちょっとほっとしような、それでいてまだちょっと不満げな様子で言う。
雅紀は鞄を開けると、小さな袋を取り出して渡した。
「口にあうか分からないけど……」
昨日の夜中、レシピ片手に初めて作ったクッキーだった。
義理は飴、本命はクッキー、なんて、どこの菓子会社の戦略なんだと思う。
「お前が?」
真哉が驚いたように見てくる。
「うん」
雅紀が頷くと、袋を開けて、中から一つ取り出した。
「……なんで、クマ?」
真哉が不思議そうに言う。
「かわいいだろ?」
たれ目仕様でかわいさがアップしていた。
「なんで、ハートじゃねえの?」
今度はぼそっと呟くように言った。
「それしかレシピが無かったんだよ」
それも、やっと見つけたものだった。
「は? こっちの方が難しいだろ?」
「なら、いいじゃん」
雅紀が言うと、真哉は不満げな顔をしながらも、クッキーを口に放りこんだ。
途端に、顔が変わって。
「旨いな、これ」
驚いたように言う。
「良かった」
実は何回も失敗して、昨晩はほとんど寝てなかったりする。
朝からぼんやりしていて眠さに勝ちきれずにいた。けれど、真哉の嬉しそうな顔を見たら、眠気はすっと消えていった。
不思議だな、と思う。

「来年もこれ予約な」
真哉が言う。
「ん」
来年も、再来年も、その次も。
ずっと続いていればいいな、と雅紀は思った。

Fin

本命にはマシュマロだったかも?
クマクッキー食べたい。( ̄(エ) ̄)v

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