必要なものは用意した。
週末に泊まりに来る理由をあれこれと考えてはみたけれど、結論はでず、翔太がおばあさんに何か言われるかと心配したけれど、何も言われなかったらしい。
翔太は大きな菓子折りを抱えてやってきた。
夕飯の後入浴を済まし、部屋のベッドに隣り合って腰を下ろした。
お互いそのつもりでいるのだから今更恥らうこともないはずなのに、無言のまましばらく時が過ぎた。
口説く必要はなくて、だからといって、どうやってきっかけを作ればいいのだろうと祐は思っていた。
やる? と聞くのもなんだかだと思う。

「キスしていい?」
翔太が見上げてきた。
悪いわけがない。
「ちょっと待って、その前に」
祐は立ち上がると、明かりを小さいものに落とした。煌々とした明かりの下は照れくさい。
ほんのり暗くなった中、祐がまたベッドの縁に腰を下ろすと、翔太が腕を首に回してくる。
翔太の柔らかい唇が触れてきて、啄ばむようにしてきたと思ったら、舌を差し入れてきて口内を撫で回す。
こんなこといつ覚えたんだよ、と思いながらも祐は翔太にされるままだった。
長いキスの後、ベッドに押し倒されて、翔太の手がパジャマのボタンを外していく。
ちょっと待てよ――と祐は思った。
この体勢ってことはもしかして?
自分が抱くつもりでいたのに、翔太は翔太でそう思っていた?
疑問に思いながらも、パジャマを脱がせ、肌に唇を這わせる翔太を引き剥がすなんてことはできなかった。
「愛してる」
翔太がまっすぐ見てくる。
祐は思わず笑いが出た。
「台詞はいいよ。翔太の言葉で言ってよ」
記憶力抜群の翔太はきっとさらで暗唱できるほど、本の内容を克明に覚えているのだろう。
ちょっと考えて、
「大好き……」
翔太が言い直す。
「うん」
借り物の言葉より翔太を感じられる言葉の方が、素直に受け入れられる。
本の内容が本当か確かめようかとは言ったけれど、始めて体を重ねるのに、借り物ばかりじゃつまらない。
翔太のパジャマを脱がせてやって、素肌に触れあいながら、しばらく戯れていた。本の筋書きとは違うけれど、自然に手が口が動く。それは本能に近いものを感 じた。

「ホントに入れていいの?」
翔太の手が窄まりに触れる。
お前、女になりたかったんじゃないの?とは思ったけれど、翔太がそうしたいなら、そう望むなら、それが自分にできることなら叶えてやりたいと思う。
「いいよ」
翔太には敵わない。それはずっと以前からだ。
「祐が気持ちいいなら、どんなことでもするよ?」
翔太が顔をうかがってくる。
そんな翔太も可愛くて、お互い裸になって互いのものを擦り合わせて、それなりに気持ちよかったけれど、何か物足りなかった。
「慣らさないとだめだから……」
自分でやるのもなんだかと思いながら翔太にやれとも言えなくて、祐がジェルを手に取ろうとしたら翔太に取られた。
「指でやればいいんだよね」
不安そうな顔をしてくる翔太に、祐は笑って頷いてやることしかできなかった。
初めから気持ちよくなれるとは思っていなかった。
けれど、十分に慣らされた後の体は、少しの違和感だけで翔太を受け入れた。
「祐、気持ちいい?」
体を揺らしながら翔太が聞いてくる。
「ん……」
最初は相槌のように返事を返していた。それは、次第に喘ぎを伴う快感に変わっていった。
内で翔太の存在を感じて、敏感なところは翔太の手に包まれて、聞こえるのは翔太の荒い息づかいと突き上げる体の音とベッドが軋む音と、耳の中で反響する自 分の息づかいで、そんな中でこらえられなくなった熱は大きな愉悦と共に弾けた。


「気持ち、良かった?」
翔太が荒い息のまま耳元で囁いてくる。
「ん」
祐は翔太をぎゅっと抱きしめた。
汗ばむ肌が触れ合うのは気持ちいいことでもないけれど、それよりも、腕の中に翔太がいることの方が嬉しかった。

「そういえば、ひとつだけ聞いていないことがあったな」
ふっと思い出したことがあって、祐は翔太に問いかけた。
今なら、翔太は何でも答えてくれそうな気がした。
「何?」
「おでこのガーゼは何をした結果なんだ?」
それが始まりだった。
「あれは……エレベータの中で頭をぶつけたんだ」
――は?
「おもいっきり?」
「うん、おもいっきり。目の前が真っ暗になった。」
そりゃ、こぶのひとつでもできるというものだ。
「それも何かの本に書いてあったのか?」
「うん」
まあ、それはそうなんだろう。
「もう、そんなことするなよ」
翔太は翔太でいて欲しい。
「うん」
翔太がにこっと笑う。
その笑顔をずっと見せていて欲しい。

そう祐は思った。


Fin.



最後まで読んでいただいてありがとうございました。
体が入れ替わるお話は多々ありますが、唯川恵さんの今夜は心だけ抱いてと大林監督の転校生を参考にしました。
体がひとつになるのは、渡瀬悠宇さんのミントでキスミー。
軽いコメディを目指したつもりなのですが、いかんせん中途半端になった気も。
飛鳥ちゃんは他で試したやつと幸せになってくださいということで、エンドマーク。

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