それは覚悟していたことだった。
アレシオはその報告は王の口から聞いた。あの時と同じように、王の横にはヒューとハービィが立っていた。
「シリスが世を去った」
――違う
シリスは自分の部屋にいる。それは分かっているのに、アレシオの背筋に冷たいものが走った。
「……そうですか」
アレシオは思わず顔を伏せていた。
「獣に食い荒らされて、原型は留めていない。会うか? 」
「……はい」
会いたいわけではない。けれど、それは勤めだと思った。
「ただ」
王は言いかけた言葉を一旦とめた。
アレシオは顔をあげた。
「神官の印であるピアスが見つからなかった。鳥か獣が口へ含んでしまったと思われるが……」
見つからないのは当たり前だった。
それはシリスの耳にはめられたままだ。誓いの印を取ることは考えられなかった。
「そうですか」
アレシオに何も言うことはなかった。
シリスの身代わり、それは献体として差し出されていた一体だった。
ハービィに睨まれながらも、街で遊んでいたことが役にたった。自分の印章と王宮に出入りする医師の名前に誰も逆らわなかった。
髪を黒く染め、シリスの着ていた服を着せ、森まで運ぶことも大変だった。獣は弱いものを、物言わぬものをよく知っていた。森へ入って少し行ったところで、
シリスの身代わりにしたてた者は餓えていた獣に引きずられいった。シリスのいたところまで連れていきたかったけれど、それはできなかった。自分がここで命
を落とすわけにはいかない。シリスを守るのは自分しかいなかった。
見つかることはないかもしれないと思った。その方が都合は良かった。
けれど、そうではなかったらしい。
なぜ分かったのか聞いたアレシオに、ここ数日森のある一点の上を鷹が旋回していた事をハービィが教えてくれた。
ハービィとヒューに連れられ、今まで入ったことのなかった地下の部屋へ通されると、中央に上に厚くあでやかな刺繍を施された布をかけられた白木で造られた
棺が置いてあった。
「こちらへ」
棺の横へ促され、蓋が開けられるのをアレシオはぼんやりと見ていた。中を見て、思わず顔を背け目を閉じた。正視できる状態ではなかった。
アレシオは膝をつき頭を下げ手を合わせた。
――――ごめんなさい
詫びの言葉を心の中で呟いた。ごめんなさい、そう何度も何度も呟いた。
「アレシオさま、もうよろしいですか? 」
ヒューに促されて、もう一度お詫びの言葉を呟くとアレシオはゆっくりと立ち上がった。
「手厚くしてあげてください」
出した声は震えていた。
「分かっております」
ヒューの声は落ち着いたものだった。シリスではないと分かっていても、動揺している自分がいる。けれど、王もハービィもヒューも、普段と変わらないように
アレシオには見えた。シリスを守れるのは自分しかいない。それは分かっていたけれど、更に現実のものとしてアレシオは重く感じた。
地下から戻ると、ハービィとヒューとは別れ、アレシオは急いで部屋へ戻った。シリスではないと分かっているのに、顔を見なければ安心できなかった。
「どうしたのですか? 」
微笑むシリスを見て、アレシオは、ほっと息をついた。