お湯が体を伝って落ちていく。
風呂場まで案内して、タオルを出すと圭輔は脱衣所を出ていった。
――――いいのか?
祐樹の頭の中でそう囁く声があった。
けれど、少しでも可能性があるのなら、それを捨てたくは無かった。最悪の結果が待っているかもしれない。体を見られただけで、そこで終わってしまうかもし れない。
けれど、確かに感じた高ぶりがあるから、それを信じたいと思った。

祐樹が部屋へ戻ると、圭輔はベッドの上でぼんやりと座っていた。祐樹は圭輔の前に立つと、身に付けているものを一枚づつ落としていった。
男であることを知って、それでも受け入れて欲しい。
自分にはないその壁が圭輔にとってどれだけ高いか分からないけれど、圭輔が越えてくれることを願うしかできない。
全てを圭輔に晒すと、圭輔は下から見あげていき、祐樹と視線があうと無言で立ち上がった。
「いいのか? 」
耳元で囁く。
「ん、圭輔がいいなら……」
好きな人が抱いてくれるというなら、これが、たとえ最後でも、拒むことはできない。
「先にベッドへ入れよ」
目線で示されて、祐樹は頷いた。ベッドに体を滑りこませ、圭輔を見ると、圭輔はセーターを脱ぎ、シャツのボタンに手をかけていた。手早くボタンをはずと、 アン ダーシャツを脱ぎ捨てて、祐樹の上に覆い被さる。
「ホントに、いいのか? 」
「ん」
ためらうことなく頷く。早く――――そう思った。

圭輔の顔が近づいてきて、祐樹は目を閉じた。触れてきた唇はすぐ離れてしまったこの間と違い、何度も啄ばむように触れる。肌を撫でる手は脇を下り、上がっ てくると胸を突起を摘んだ。
「んんっ……」
体がひくつく。弾みで塞がれていた唇が離れた。
「これがいいんだ」
圭輔の手が胸の先を指先でこねまわすように弄る。
「あ、」
硬くなったそこはどんどん敏感になっていく。手が唇になって舌が転がす。
手は下へ伸ばされて、敏感なところを包んだ。
「あっ、そこは――――」
「何?」
圭輔が顔をあげた。
「いいよ、っ……嫌だろ……」
男同士が嫌ならば、自分と同じものを弄りたくはないだろうと思った。自分がイきたいわけじゃない。
「触られんの、嫌? 」
圭輔の手がゆっくり擦りあげる。
「そうじゃ……っ、ない」
圭輔の手が自分のものに触れている。それだけで、体の奥が熱くなって、息が荒くなってくる。
「じゃあ、いいじゃん」
圭輔の手の中で変化するものを、その変化を助長するように圭輔は手の中で弄る。ただ擦りあげるだけじゃなく、窪まったところを指先で刺激して、先を撫でま わす。
「けい……」
祐樹は手に触れたシーツを握りしめた。試してみるかと訊いたのは自分で、自分は圭輔のやることに文句をつけられる身分じゃない。
唇が肌を這い、手が感じるところを刺激する。目をつぶればいつでも脳裏に浮かぶその人が自分を組み敷いている。気持ちが通じているわけじゃないと思って も、意識は快感の中に落ちていきそうだった。
「っ……」
圭輔の指が奥の窄まりに触れ、体がぴくんと跳ねた。
「いいんだろ? 」
圭輔が窄まりを指先で優しく撫でながら訊く。
「いいよ……」
何をされても、文句を言うつもりはない。始めは痛いと話では聞く。どんな痛みを伴うものであっても耐えるしかない。
自分で言い出したことだ。
どんなことをされても、どこで放りだされても、それを全て受け入れなきゃいけない。
けれど、圭輔の手が唇が優しくて、自分は思われていると誤解しそうになる。
圭輔はベッドを降りると、机の引出しをあけていた。中から何かを取り出すと、ベッドへ戻り祐樹の足元へ腰を下ろす。
「何? 」
不安に思って祐樹は上半身を起こした。
「大人しく寝てろよ」
そう言うと、圭輔はベッドの上に上がって、祐樹の片足を開くように少し持ち上げた。
「あ、何? 」
下から全てを見られていた。
覚悟はしても不安はある。できるなら、この体を受け入れて欲しいと思うけれど、全てを見られるのは抵抗があった。圭輔が嫌悪する自分と同じ体だ。

「解さなきゃ入れられないだろ」
まるで当たり前のように、今更何を言うんだというように、圭輔が言った。
「あ、そんなこと」
痛みは覚悟していた。
「お前がよくても、俺が辛いんだよ。このまんま入れたらお前一晩は軽く立ちあがれないぞ、それでもいいの? 」
「それは……」
言葉が詰まった。
「そんなことも知らないで抱かれるって言ったのか?」
ぬるっとしたものが、窄まりに触れた。
「んっ……痛みがあるとは聞いたことがあるけど、よくは知らなかった……」
ぬるっとしたものが体の中に入ってくる。それは何かを探るように内壁を撫でる。
「そんなの男子校の常識だぞ」
中を探る指が丁寧に体の内側をなで上げる。
「は……、あ……」
予想していなかった快感に体が仰け反った。
「あ、けい……っ」
今まで知らなかった感覚が体を走る。
「ここなんだ」
「あ、あ、嫌だ」
思考よりも先に言葉がでた。
「嫌?」
圭輔の言葉にかぶりを振った。
「あ、ちが……でも」
体がひくつく。快感の元を直接触れられている感じがした。立ち上がっているものが漏れ出す熱で先を濡らす。
「いい顔してるよ、祐樹。写真に収めときたいくらいだよ」
「あ、嫌だ、そんな……っ」
言葉では反抗しても、体は自分の意志とは離れたところにいた。何も抵抗できない。体は圭輔の指を欲しがって、自然に動いてしまう。
圭輔の指は増やされて、中をかき回す。いつもは閉じているはずのそこが、何でも飲み込んでしまうんじゃないかと思えた。

すっと指を引き抜かれ、中が空っぽになった。
「あ、嫌だ、圭輔……」
どこで放り出されてもいいって言ったのに、言葉は懇願になっていた。荒い息遣いが止まらない。体は満たされるものを欲しがっていた。
「いいの? お前それで」
圭輔が上から祐樹を見下ろす。
「あぁっ、欲しい、圭輔。お願い――――」
腕を首に回した。
こんな快感があるとは知らなかった。好きな人を受け入れるだけだと思っていた。そこにあるのは痛みだと思っていた。
「屈辱的だとは思わないのか? 男に組み敷かれてんだぜ? 」
その言葉には軽蔑が含まれているように感じた。
「なんで? 好きな人を受け入れることがなんで屈辱なんだよ」
欲しいと思うその気持ちは相手が圭輔だからだ。目の前の圭輔がいる。
「俺はお前に組み敷かれたいとは思わないけどな……」
腰を持ち上げられて、窄まりに何かをあてがわれたのを感じた。
「あ……っ……」
それは、ゆっくりと体の中に入ってくる。今までとは違う圧迫感に、息が苦しくなった。
「大丈夫か?」
圭輔が前髪を梳き上げる。祐樹はゆっくりと息を吐いた。
「ん……」
少しの痛みと異物感はあるけれど、空っぽだと感じたときよりずっと良かった。体の内側で圭輔を感じる。
「だけど……」
圭輔が唇を啄ばむ。
「お前を自分の下で喘がせたいと思う……それってエゴかな」
触れたまま呟いた唇は、そのまま二、三度唇を啄ばむと離れた。
「なんで? もし、本当にそう思ってくれるなら――――僕は嬉しいよ」
祐樹は圭輔の頭を抱きこんだ。
今、一番近いところで繋がっている。
「そっか」
圭輔は大きく息を吐くと、更に深く埋め込んだ。
「んっ……、あっ……」
埋め込んだものを引くとまた埋め込む。擦られる内壁がその度に快感を伝えた。
「圭輔……」
祐樹は圭輔の髪をそっと掴んだ。意識をどこかへ連れていかれてしまいそうだった。
速くなる抽迭の動きとともに、圭輔の息遣いも荒くなっていく。自分が漏らす息は熱い熱を伴っていて、ぴちゃぴちゃと響く音にも、熱を感じた。
圭輔が大きく息を吐いた。
「一緒にイこうぜ……」
言葉とともに、敏感のところを握られて祐樹は息を呑んだ。
「あ、」
擦りあげられて中を突かれて自分が自分ではなくなってしまいそうで、祐樹はすがるものを探して圭輔の肩を掴んでいた。
「あ、っ……、ん、あ、も……けい……」
言葉が切れ切れに、でも自分の中で抑えきれずにでてしまう。体の奥で弾けた熱に、体は強張るように仰け反った。
「祐樹っ……」
押さえ込むようにされた腕の中で、体の中では震えるものを感じた。


静けさの中時計の音が響いて聞こえた。
ふっと戻った意識に祐樹は寝てしまったらしいと気が付いた。どのくらい寝てしまったのかと思っても見回す範囲にそれを教えてくれるものは無かった。
「圭輔」
自分を抱くものをゆすった。誰かが帰ってきてこんな姿を見られたらまずいだろうと思った。
更に強く抱きしめられて、圭輔は寝ているわけじゃないと思った。けれど、返事は無い。
「圭輔? 」
もう一度呼んだ。自分に回される腕を無理に剥がしたくは無かった。
「離したくない……」
圭輔が摺り寄せるようにして呟く。
「……でも、まずいだろ。誰か帰ってきたら」
自分だって離れたくはない。満たされた今のまま、ずっと肌を寄せていられたらいいのにとは思う。けれど、現実はそれを許してはくれない。

目じりにそっと唇で触れると、圭輔は腕を解いてくれた。自分で望んだことなのに、離れていく腕が寂しく感じた。
ベッドを降りると、祐樹は脱ぎ落としたものを一枚づつ身につけた。
最後の一枚を着ながら、
「……どうだった? 」
圭輔に問い掛けた。
自分の望む答えを圭輔が言ってくれると信じたかった。
「テーブルのノートパソコン開けてみ」
気だるそうに圭輔が答える。
言われた通り、祐樹はパソコンの蓋を開けた。動き出したパソコンはパスワードを要求してきた。
「パスワード入れろって」
祐樹は圭輔を見た。
「小文字で y・u・u・k・i」
「y・u ……」
入れながら、胸がとくんと弾む。
パスワードを認証して画面は変わった。
「それが、俺の答えだよ」
画面には笑顔の自分が映し出されていた。
「きれいだろ? 」
圭輔の問いに祐樹はかぶりを振った。
温かいものが胸からあふれてきて、画面を霞ませる。
「圭輔の腕がいいからだよ」
きれいかどうかは主観として、温かさを感じた。幸せそうだね、そう画面の自分に心の中で呟いた。


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