裸電球の下、丸太を半分にして作られた大きなテーブルはそれだけでキャンプの雰囲気を出していた。
大きなプレートに盛られたバーベキューには湯気があがっていて、カレーの匂いは食欲を刺激した。
適当に座った席は程よく女の子を挟んでいて、テーブルの端に卓巳は雅也と並んで座った。
「雅也くんって、何も部活やってないんですかぁ?」
テーブル端から声が飛んでくる。
「ああ、あいつは入学当時から帰宅部だよ」
答えたのは雅也じゃなかった。
「そう、最近は彼女ができて、その帰宅部にも拍車がかかってるよなあ」
声が雅也に向かってくる。
「別に」
雅也は関心なさそうに答えていた。
「えー、彼女いるんだ」
残念そうな声が聞こえて、
「そう、俺達はいないけど」
雅也の友達の一人がおどけたように答える。
雅也がもてるのは昔からのことで、関心がないのも昔からのことだ。
「そうそう。でも、その雅也がぞっこんな彼女は雅也を置いて、友達と泊りで遊びにいったってーゆうから、その先で今ごろ何してるか気になるんじゃない
の?」
肉を齧りながら雅也の友達がからかうように言う。
「さあ、気にしても仕方ないよ。こっちはこっちで好きにやるさ」
雅也はそう言って、「な?」と卓巳に同意を求めてきた。
「えー」
「いいのかよー」
と非難とも驚きともとれるような声があちこちであがり、
「告げ口してやるぞ」
という声もあったが。
雅也はただ笑っていた。
そりゃあそうだ。誰に告げ口するつもりなのか。彼女と言っていたのだから、女だと思っているだろうがそこが大きな間違いだ。
「こういうところで食べるカレーも美味しいな」
雅也が声をかけてくる。
だから二人で来ようって言ったじゃないか――そう言葉が喉元まであがってきたけれど、卓巳はそれを飲み込んだ。
「友達に言ってたんだ」
卓巳が言えずにいたことだ。
「ん?何を?」
雅也が怪訝そうな顔をする。
「彼女がいるって……」
正確に言えば違うけれど。
「彼女がいるなんて言ってないよ」
「でも」
雅也の友達が雅也には彼女がいると言っていた。
「彼女でもできたのか、って言われたから、まあなって答えただけだ」
「……そう」
でも、それなら言ったことと同じだと思う。
「ばれたらそれはそれで構わないと思ってるよ」
雅也が耳打ちするように言い、テーブルの下で手を握ってくる。卓巳は返事ができなかった。
食事の後片付けをして花火をした。その間もずっと雅也は傍にいた。
そして、その周りに女の子達がいてその周りに雅也の友達がいて、卓巳が一緒に来た吉野たちとは距離が少し離れていた。
なんとなくマズイ気がして卓巳は吉野達のところへ行こうとしたけれど、その度に雅也に止められた。
「向こうがこっちに来ればいい」
というのが雅也の言い分で、けれど初対面であるだけでなく通う学校の名前を考えると気安く交じることに躊躇いがあるのは分かる。
進学校として名のある学校は卓巳たちにとっては煙たい存在だ。
お開きになって卓巳がほっとため息をつくと、
「ちょっと見ておきたいところがあるから先に戻っていてくれ」
と雅也は言い、
「卓巳行くぞ」
と促してくる。
どこへ行くんだろうと思いながらも、
「すぐ戻るよ」
そう卓巳は吉野達に言った。
キャンプ場のはずれは微かに明かりが届く程度で、薄暗い中足元に気を付けながら、卓巳は雅也の後ろを付いていった。
「雅也、どこに行くんだよ」
後ろから声をかけても、雅也の返事は無かった。
しばらく行くと地面は土だったはずが石が多くなってきて、川の流れる音が聞こえてきた。
川原に出たんだと思うと、雅也は一際大きい石に座ると手招きをしてきた。