混浴の露天風呂には誰もいなかった。竹の柵に囲われた中、岩風呂があってお決まりのライオンの口からお湯がちょろっちょろ流れている。
「やっぱ、温泉は露天だよな」
空には今にも降ってきそうなほど星が輝いていた。家では絶対見ることができない星空だ。
裕は頭の上にタオルをのっけて、両腕を岩の上にのせて湯の中でくつろいでいた。その横で孝己もちゃぽんとお湯の中に浸かっていた。
覚悟はしてきたつもりだった。
でも、横を見てでかいなあと思う。
何度か挑戦して途中で諦めた。息ができなくて意識が薄れていって、裕に頬を叩かれたこともある。
でも、今日こそはと思った。
ゆだってしまいそうで、孝己は岩の上に上がった。
「孝己」
裕が見上げてくる。
「何?」
「ちゃんと責任はとるから」
「ん」
胸がきゅんとなる。大切な幼馴染はずっと待っていてくれた。
布団の上に持参したバスタオルを敷いて、裕は枕元にジェルを何本も並べていた。数えると十個ある。
「これだけあれば、大丈夫だろ」
裕は腰に手をあてて満足げに頷いていた。
いよいよだと思うと孝己の胸には不安が少し顔を覗かせた。
けれど。
「な」
急に振り向いて裕が同意を求めるから孝己は「うん」と元気に頷いた。
もう待たせることなんてできない。
「電気消すね」
孝己が部屋の入り口まで行ってスイッチに手をかけると、「消すの?」と不満げな声が聞こえた。孝己は一瞬躊躇ってその声を無視をした。
急に部屋が真っ暗になって、窓からの街頭らしい明りがもれてくるだけで、影だけがやっと分かる状態になった。
「お前の顔みたいのに」
裕の影がまだ不服そうに言っていた。
「やだよ」
ぼそっと文句がでる。お触り程度のことでも意識がうつろになって、自分がどうなっているのか分からない。その先の自分なんて想像さえあまりしたくない。
「ま、いっか。早く来いよ」
裕に手招きされて。
「うん」
それは素直に頷いた。
宿に備えてある浴衣を羽織っているだけで下着はつけていなかった。
浴衣を落とされて、キスされて、ぎゅっと抱きしめられただけで、孝己は体が熱くなった。
唇が肌に触れる。ジェルで濡らされてぐちょぐちょにされた窄まりを指で解される。
「ん……」
思わず息が漏れてしまう。
自分達以外は誰もいないみたいに静かだった。
家とは違う。姉の七海が突然飛び込んでくることなんてない。声をあげたら親が見にくることもない。宿の人は叫んでもすぐに応対してくれなかったし、この部
屋は入り口からは遠かった。部屋の裏は湖で、夜に人がいるとは思えない。
自分達以外に見た客はあのカップルだけで、きっと今ごろあの人達は自分達のことで忙しいだろうと思う。
泊まりだから家に帰らなきゃいけないこともない。
朝までずっと、その気になれば、ずっと体を絡めていられる。
「孝己……」
裕の息が肌にかかる、それだけでびくっと体は反応した。
「何?」
孝己は裕の頭を抱きこんで、髪に手を絡ませた。
「今日は絶対やめないから」
「ん」
それは何度も言われたし覚悟もしてる。
「好きだった、ずっと」
言いながら、裕の唇が肌を這い、足を絡める。
「過去形なの?」
それは嫌だ。
「うん。過去形」
肯定されてしまった。
「終わった、ってこと?」
なんか悲しくなってくる。
「人生なんて過去でできてるじゃん。こうやって言ってるすりから終わっていく。ずっと好きだったんだぞ。それを認めてくれよ」
「うん」
いつも傍にいてくれた。
「じゃあ、これからは?」
気になる部分だ。
「今までの気持ちを捨てるなんて一生かかってもできそうにない。だから」
裕が孝己の中から指を抜いて唇にちゅっと触れると体を起こした。足の間に体を滑りこませると孝己の腰を抱え上げる。
「あ……」
孝己は窄まりに圧迫感を感じた。押し当てられたものがゆっくりと中へ入ってくる。
「あれ?」
裕が不思議そうな声を出した。
「何?」
ただでさえ不安な気持ちがあった。裕が突然あげた声に不安は一気に大きくなった。
「お前、大丈夫?」
裕が不思議そうな声で訊いてくる。
「え、うん」
圧迫感はある。けれど、それは今までより比べ物にならないほど楽だった。
「今までの成果かな?」
ぐっと裕が押し入ってくる。ちょっと苦しいと思ったけれど、ゆっくり息を吐いて孝己はやり過ごした。
覚悟は杞憂で終わったみたいだった。
「どう?」
裕がゆっくり動きながら孝己の前髪を払う。
「ん、大丈夫」
なんで今まではだめだったのだろうと思うほど、自分の体はあっさりと裕を受け入れていた。
「そうじゃなくて、どう? いい?」
「あ、うん」
「うんじゃなくて」
「うん」
「だから――――いいって言えよ」
じれったそうに裕が言う。
「ん……いい」
「それじゃ、言わされてるみたいだろ」
裕の熱いものが押しては引いて体を揺らす。
「いいよ……ホント」
内側を擦られる感覚は手でされていたときとは全然違う。
「はぁ……」
熱いものが体の中でうごめく。
「いいんだったら、もっと乱れろよ」
そんなこと言われても困ると思った。気持ちよくて、何も考えたくない。
擦れるところがくちゅくちゅと音をたてている。裕のものが内壁をつく。痺れたように快感は広がっていく。
「こっちも触ってやんないとだめか」
裕の手が孝己のものに触れた。
「あん」
孝己は思わず声がでた。
「やっぱ、そうなんだ」
「ちが……」
包まれて擦られて、直接受けた刺激にすぐそこは反応を返す。
「あっ、んっ――――、あっ……や……ああっ」
頭が真っ白になって、孝己は簡単に裕の手の中へ落ちていた。