デールの手で全てはがされて、陸の体は何も身にけていなかった。いつもより深いキスをされて、どこか頼りない体は宙に浮かんでいるようにさえ思う。
「あ……、ん……」
デールの舌が体を這う。快感をくすぐられるような感覚に陸は自然に声が漏れてしまった。
胸の突起をデールの舌がもて遊ぶ。普段あることさえ忘れているようなところが硬くなって存在を主張する。
「デールっ……」
白いシーツの上で足が落ち着くところを探すように彷徨う。体の全てが神経になってしまったみたいに感じてじっとしていられなかった。
「感じやすいんだな」
デールが指先で胸の突起を軽く弾く。
「あっ……」
全身にぞわっと鳥肌が立つような気がした。一瞬固まった体は息をすることも忘れて、デールがくれる刺激を感じていた。
「きれいな肌だね」
唇が肌を啄ばむ。場所をかえ、また。
「やだ……」
誉められているような言葉がくすぐったかった。
「ん? いいんだろ? ここももうこんなになってる」
手を伸ばしたデールが陸の一番敏感な場所を包み込むようにした。
「あ、やだ、ちが……」
手を伸ばしてデールの腕を掴もうと思ったのに、手に力は入らなくて陸は諦めた。

「デールも、脱いでよ……」
自分ばかりでなく、デールにも触れたかった。
「脱がせてごらん」
デールが小さく笑う。
陸が手を伸ばしてシャツのボタンを外そうとすると、手はうまく動いてくれなかった。
「ずるいよ……」
指先に力が入らなくて、簡単なことなのにできない。
デールが体を起こすとシャツのボタンを外して、ベッドの脇に放った。
「これでいいか?」
陸の前髪を梳くようにして頭を撫でる。
「ん」
陸は手を伸ばすとデールの肌に触れて、そのまま撫でるように胸の突起に触れた。
「もう、硬くなってるよ」
「ああ、陸が可愛いから」
デールが陸の頬に軽くキスを落とす。
「僕に感じてくれてるの?」
「ああ」
唇が首筋を降りていく。
「下も?」
デールがくっと笑った。
「確かめてごらん」
デールの息が優しく首筋を撫でる。
そっと伸ばして触れると、ズボンの上から硬さを感じた。
「触りたい……」
全て、デールの全てに触れたいと思う。
「いいよ」
デールが簡単に言う。けれど、その前にシャツのボタンよりも強敵そうなものがある。
外そうとして、やっぱり無理だった。
「デール、できない……」
嫌になるくらい自分の体が頼りなかった。何かに吸い取られたように力がまったく入らない。
「全部脱いだら俺はもう我慢できないよ。それでもいいのか? 陸」
デールが顔をあげて陸の瞳を覗き込む。
「いいよ」
陸は即答した。一度だけでもいいからと願ったことだった。人を好きになる気持ちを初めて教えてくれた人だった。
「後悔しないか?」
「しないよ」
絶対――――そう小さく続けた。
デールは躊躇ったように顔を伏せて、小さく息を吐くと体を陸の脇にあお向けに落としてズボンのボタンをはずすと下着ごと脱いでベッドの下に落とした。
「これでいいか?」
デールが体を抱きしめるようにして足を絡ませてくる。デールのものが直接下腹部に触れていた。
「うん」
陸は腕をデールの背中へ回してぎゅっと抱きしめた。体が密着する。デールの体温をそのまま感じた。
「陸」
デールの指が陸の前髪を弾く。
「ん?」
「お前は元の世界へ還るんだろ?」
「ん、そうなるみたいだけど僕にはよく分からない。連絡係ってことは行き来するってことなのかなあって思うだけ」
ゆっくり体を擦りあわすようにすると、ぴったり合わさったところはお互いを刺激しあう。
「還っても、また戻ってくるんだよな」
「うん。今度は僕がデールを……どこにもやらない……」
息が荒くなってくる。擦りあわされるそこは確実に熱を膨らませる。
「陸っ……」
デールが動きを早める。
「あっ……だめ……でちゃうよっ」
嫌だと思うのに体は自分の意志に歯向かって快感へ進んでしまう。
「我慢することはないさ」
デールが互いのものを束ねるようにして扱き上げる。
「いやっ、あ、あっ――――」
一瞬頭が真っ白になって、体の力が全て抜けた。ベッドに沈みこんだ体は腹部に湿り気と特有の匂いを感じた。

デールと自分の荒息遣いが耳の中に響く。それは次第にゆっくりとしたものになっていった。
「抱いてくれるんじゃなかったの?」
陸はデールを見上げた。
そう思っていた。
「時間はまだあるだろ?」
「でも」
陸はデールの体に腕を回した。じっとりした汗で腕が張り付く。
「マキが来るのは何時?」
「夕方の五時過ぎ」
人の少ない時間を選んでいるようだった。
「じゃあ、足腰立たなくなったら困るだろ?」
「え?」
「陸は初めてだろ? それとも経験あるのか?」
「ううん」
陸はかぶりを振った。男と体をすり合わせることすら考えたこともなかった。
「なら、今はやめておいた方がいい……今夜、その方が色々気にしなくていいだろ?」
「居てくれるの? ずっと」
「陸が追い出さないなら」
「追い出すわけないじゃないか」
居てくれるなら、このままずっと居てくれて構わない。ノインのことは気にならないの? と聞こうとして陸はやめた。
「じゃあ、シャワー浴びて、陸はすることがあるんだろ?」
「あ、でも」
デールが居るのに勉強なんてする気にはなれなかった。
「俺が邪魔なら出て――――」
「嫌だ」
陸はデールの腕を掴んだ。どこにも行って欲しくない。
「俺のせいで、陸が非難されるのは嫌なんだ。進みが悪かったら何か言われるだろ?」
「それは……」
陸は視線を伏せた。厭味ならマキによく言われる。
顔はそっくりなのに頭のできは全然違うんだね、なんて余計なお世話だ。どんなに背伸びしたってノインに敵うわけがない。
「それから」
デールの声が厳しくなって、陸は顔を上げた。
「お前まで俺を背負おうとするのは止めてくれ。陸、お前までノインみたいになるのはたくさんだよ」
「でもっ」
デールが危険なところへ送られるのは嫌だった。
「そう言ってくれるのも思ってくれるのも嬉しいけれど、俺は自分の力で帰ってくるよ」
「でもっ」
会えなくなるのことも嫌だった。
「それでも、っていうなら、俺はもうお前とは会わない」
「嫌だよっ」
陸はデールの腕にすがり付いてかぶりを振った。
「ノインには限られた世界しかないけれどお前は違うだろ? 元の世界では自由だろ? 俺なんかより良いやつがいるよ」
「嫌だ、僕はデールがいい」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺はもう誰かが俺のために犠牲になるのは嫌だ」
「でもっ」
「陸」
デールが唇にそっと触れる。
「分かったね」
厳しい口調で言われて、陸は声が出せなかった。ただ、デールを離さないように腕にしがみついていた。
「分かったらシャワーを浴びよう」
デールが頭を撫でる。
素直に従いたくなくて、陸は唇をかみ締めたまま下を向いていた。
「仕方ないな」
デールの小さくため息をこぼす音が聞こえた後、陸は自分の体がふわっと浮くのを感じた。
「え、何?」
体が不安定になって陸はデールの体にしがみついた。
「そう、そのままでいいよ」
陸を横抱きにしたままデールがベッドを降りる。
「あ、や……」
「洗ってやるよ、陸」
デールが笑う。デールの笑顔は優しく温かくて心がほっと息をつく。
「……好きだよ、デール」
それだけは分かって欲しかった。
「分かってるよ、陸。俺も、好きだよ」
耳に心地よく息がかかる。
二人だけしかいなくて、二人の間に距離はなかった。けれど、間にあるものを陸は感じた。
ノインの顔がちらつく。それは、きっと消せない影だと思った。
それでも。
そう思いながら陸はデールの胸に額を押し当てた。
気持ちを抑えることはもうできない。

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