「大丈夫か?」
大輔がかけてくれる言葉は優しい。
「うん」
陸はこの人を離したくないと思った。
少し顔をしかめて
「あんまりしめつけるなよ」
大輔が言う。
「そんなの、無理……」
自分の身体なのに、思うように動いてくれそうにない。
大輔はシーツを握っていた手を剥がすようにすると、指をからめてきた。その手を口元へ持っていくと、啄ばむようにする。
こんなところが感じるところなわけ? と思うのに大輔が触れたところには軽い痺れを感じた。
ふっと大輔が視線を向けてくる。
「気持ちいいか?」
「うん」
ついさっき苦しいような痛みを感じていたのに、それはどこへ行ってしまったのだろうと思う。
広げられたところに違和感はあった。けれど、それはもう痛みではなかった。
「陸は感じやすいな。慣れてないからかな?」
大輔が不思議そうに言う。
「慣れてた方が良かった?」
不満そうに聞こえた。
「そんなことは言ってないさ。感じてくれることが嬉しいけれど、それはいつまでか、と思っただけだ」
「慣れたら感じなくなるの?」
「さあ、人それぞれだろ」
――大輔さんは?
そう聞きたかったけれど、聞くのが怖かった。
「動いていいか?」
大輔がぐっと押しつけてくる。
「ん」
くちゃと濡れた音をたてたところに痛みは感じなかった。
「優しくしてやりたいけど、それもどこまでかな」
大輔が息を吐く。
「大丈夫」
痛みを確かに感じたけれど、我慢できないわけじゃないと思った。
「本当だな」
ぐっと押し上げられて、圧迫感を感じた。
「んっ」
返事はそのまま息になった。
大輔がゆっくりと身体を揺らす。そのたびにくちゅと淫猥な音が響く。内側を撫でるように擦られて、それは心地よく感じた。
「気持ちいい……」
突き抜けていくような快感とは違う、優しい愉悦がそこにはあって。
「そうか?」
大輔は腰へ手を回すと腰の角度を変える。
――なんで?
気持ちよかったのに、と思った。
まるで何かを探るように動く大輔のものがあるところに当たると陸は息を呑んだ
「あっ」
今までとは違う強い刺激が背筋を走った。
「これは?」
「あ……やだ……」
顔が歪んで、急に息が荒くなる。
「すぐに良くなるよ」
そのポイントを攻めるように大輔の腰が動く。
「あっ……、あ、そこっ……」
身体の神経が全てそこに集まってしまったみたいにそこしか感じなかった。
――こういうこと?
何も考えられなくなるくらいに、愉悦が身体の中で渦巻く。
「あ、大輔、さん……」
伸ばした両腕を大輔の首に回した。
「どっちがいい?」
大輔が胸の突起を弾く。
「あ、や」
次に下腹部のものを握りこむ。
「まっ――」
「こっちがいいか」
握りこんだものをきゅっと扱く。
「あ、だめ、すぐイっちゃう」
突き上げられて、おまけに弄られると感じる快感は二倍ではなくて何倍にも感じた。
「そろそろ、俺もイかせてくれよ」
大輔が動きを速める。
「っ、あ、」
くちゃくちゃと響く音と打ち付ける音、大輔の息遣いや与えられる刺激にこのままで居たいのか早く逃れたいのか分からなかった。
「あ……やだっ……だめっ」
自分の身体なのに、まったく身体は思い通りにはならなかった。
「あっ……、いっ……!」
膨れ上がった痺れは弾けるように全身に広がって、熱を放つ。
一度大輔は動きを止めて、
「ごめん……陸」
更に激しく腰を打ち付けてきた。
「っ……」
震える身体の奥を打ち付けられて、陸はどこかへ飛んでいってしまいそうになっていた。
――大輔……さん!
声は出せなくて、視界は霞んで、顔は歪んだ。強い快感が身体の中を走っていた。
大輔が大きく息を吐くと崩れるように覆いかぶさってきて、今まで聞いたことがないような大輔の荒い息遣いが耳に入ってきた。
「大丈夫、か?」
まだ荒い息をしながら、大輔が聞いてきた。
「だめ……」
大丈夫なわけがない。
「ごめ、ん……」
離れていこうとする大輔の身体を陸は出る限りの力で押さえた。
「嫌だ……離れないで……このままでいて」
必死に出した声は掠れていた。
「辛いんだろ?」
大輔の手が前髪を梳く。
「辛いよ……」
とっても。
「じゃあ――」
「やだっ」
陸は強く頭を振った。
「陸?」
大輔が顔を覗きこんでくる。
「こんなに気持ちいいことだって、知らなかった」
紙の上の知識と実際じゃ、全然違った。
「良かったのか?」
大輔が首筋に顔を埋めてくる。
「うん、とっても――」
快感が波打つ身体の奥はまだ痺れてていた。
ゆっくりと大輔が息を吐く。その音さえも、快感の波間に揺れていた。
「陸?」
呼ばれてはっと意識が戻った。
「僕、寝てた?」
呼ばれる前の意識がなかった。
「寝入りそうだったから。汗かいてるだろ? シャワー浴びた方がいい」
大輔が身体を起こす。
身体を満たしていたものが抜けてしまうと寂しさを感じた。
「もっと、こうしていたかった……」
ずっと感じていたかったのに。
「そんなわけにもいかないだろ?」
大輔が笑う。
自分はいっぱいいっぱいで、なのに大輔は余裕がありそうで、陸は悔しかった。好きなのは自分ばかりのような気になってくる。
「連れていってやるよ」
問答無用でお姫さま抱っこをされていた。だるい身体はとても起き上がる気になれなくて、汗でべたべたする身体は気持ちの良いものではなくて、素直に大輔の
首に腕を回した。
「好き」
自然に言葉がでてくる。
大輔は答えてはくれずに、唇に触れるだけのキスをしてくれた。
「言ってくれないの?」
大輔の口から聞きたかった。
「そんな気分じゃないんだ」
「なんで?」
急に不安になった。
「口だけで済ませたくないからだろうな」
――え?
「どういうこと?」
「当たり前だってことだよ」
そう言うと、大輔は少し長いキスをしてくれた。
抱かれたまま身体を洗われて、大輔を受け入れたところまで大輔は綺麗に洗ってくれた。視線が合うとキスをしてくれて、大輔が口だけで済ませたくないと言っ
てくれた意味が少し分かった気がした。
バスタオルに包まれて床に寝かされて、シーツを代えてくれて、ベッドに寝かせてくれる。
「なんか、病人みたいだね」
大切に扱ってくれる。
「立てるか?」
大輔に聞かれて、陸は小首を傾げた。
「……ちょっと怖い」
痛みではないけれど違和感はあって、力を入れることを躊躇った。
「傷はないから大丈夫だと思うけどな」
大輔は少し不安そうな顔をした。
「痛くはないから大丈夫だよ」
少し違和感があるだけだった。
「無理はするなよ」
「うん」
「少し休め」
大輔がゆっくりと身体を押し倒してくる。
「大輔さんも」
陸は腕を伸ばした。
大輔が笑いながらも抱きしめてくれる。
ベッドの中で身体を絡めて、心は満たされていた。