「しぶといな」
大輔が残ったローソクの火を手を振って消す。それを陸はぼんやり見ていた。
消えなかったのはきっと自分の所為で、形だけ息を吐いても役には立たなかったらしい。
ローソクと飾りを抜いて、大輔は果物ナイフでケーキを半分に切ろうとしていた。
「ちょっと待って」
ふと思いついて、陸は大輔の手を止めた。
「ん?」
大輔が見てくる。
「ねえ、このまま食べようよ」
小さな丸いケーキは端を生クリームで綺麗に飾りつけされていて、真ん中にイチゴが山盛りになっていた。
「このまま?」
「うん、両端から食べようよ」
二つに分けられてしまうことが嫌だと思った。
「陸がそう言うなら」
大輔はナイフを置いてスプーンを渡してくれた。
「一緒に」
陸はスプーンをケーキに近づけた。
頷いてくれた大輔と同時にスプーンをケーキに挿して、同時に口に入れた。
「甘いっ!」
生クリームが口の中でとろけて、スポンジの中に挟まっていたイチゴがすっぱみをプラスする。
「旨いな」
大輔が満足そうに言った。
「イチゴショート好きなんでしょ」
それは早紀から聞いたことだった。
「ケーキって言えばこれだろ」
いくつなの? と言いたくなるようなことを言ってくる。
「モンブランとかチョコレートケーキは?」
「栗なら甘栗がいいし、チョコレートならそのままチョコレートが旨いさ」
「そう?」
モンブランもチョコレートケーキもありだと思うけれど、大輔がそう言うならそれでいいやと思った。
「お前は? モンブランとかの方が好きなのか?」
二口目を飲み下して聞いてくる。
「僕は、大輔さんがいい」
好きなものと言えば今頭にあるのは一つだ。
大輔は少し驚いた顔をして、
「俺を食うのか?」
おどけたように言う。
「もったいないから、食べない」
無くなったら嫌だ。
「大輔さんしかいらない」
何もなくなっても、二人でいられるのなら、それでいいとさえ思ってしまう。
「……早く食え」
大輔が難しい顔して急かしてきた。
「うん」
二口目を頬張ると、生クリームよりもイチゴの味がした。
大輔はもう一口食べると、顔を上げてため息をついた。
「お前の目は綺麗だな。引き込まれそうになる」
「ホント?」
大輔が褒めてくれるならなんでも嬉しい。
「出合ったのは運命かもしれないな」
視線を落として、もう一口口に収めると、スプーンを置いた。
「うん。きっとそうだよ」
運命であって欲しい。
「後はお前の分だ」
両手を身体の前に回してきて、首筋に顔をうずめてくる。
「大輔さん?」
「俺も、お前がいい」
呟くように言った大輔の声は掠れていた。
心臓がどくんと鳴って下半身が疼く。
お前の分だと言われた二口ほどを口の中へ収めたけれど、陸は味がよく分からなかった。
「食べ終わったよ」
陸はスプーンを皿の上に置いた。
身体に回された腕は痛いほどに抱きしめてきて、
「陸……」
首筋に感じる大輔の息は熱かった。
「約束、分かってるよね」
陸は大輔の腕に自分の腕を絡めた。
「それは、こっちの台詞だ」
大輔が耳元に囁くと、そのまま唇で触れてきた。ひくっと身体は弾んで胸がきゅんとなってくる。
「このまま抱いていいのか?」
大輔が手をスエットの中へ入れてくる。素肌を撫でるようにした手は胸の突起に触れると止まった。
「あ……シャワー浴びてくる……」
陸は立ち上がろうとしたけれど、身体に力があまり入らないこともあれば、身体に回された腕が弛むこともなくて、立ち上がれなかった。
「いいよ、まだ」
大輔の手が弄るように撫でる。
「あ……」
普段あることさえ忘れているようなところを触れられて、身体の中をかき回されているような気がした。
「陸の匂いがする」
大輔の唇が首筋を這う。
後ろ向きで抱き込まれているから、ただ大輔に身体を委ねるしかなかった。
「だから、シャワー……」
冬だからといっても、歩いてきたこともあって汗もかいていた。
「俺は好きだよ、陸の匂い」
大輔が大きく息を吸うようにする。
「やだよ……」
何か照れくさかった。
「恥ずかしがることはないさ」
「だって」
他人に匂いをかがれることなんてそうそうない。
「全部見せてくれるんだろ?」
もう一方の手を下着の中へ入れてくる。
「あ、そこは……」
そのまま敏感なところをすっぽり包まれてしまった。
「もう、硬くなってるじゃないか」
包んだ手がゆっくりと扱く。
「当たり前じゃん……」
泣きたくなってくる。ちょっと扱かれただけで、そこは更に硬くなってくちゃくちゃと音をたて始める。
「気持ちいいか?」
下はゆっくりと優しく扱かれて、胸は弾くように弄ばれて、首筋に感じる唇は熱くて、息は荒くなっていくし、頭はぼおっとしてきて。
「……いいに決まってるよ」
動けなかった。身体の中を渦をまく刺激に身体は悲鳴をあげていた。
「イっていいぞ」
大輔が手の動きを速める。
「違うじゃん……」
抱いてくれると言ったはずだった。
口から出るのは文句なのに、身体は大輔が言ったようにはけ口を求めていた。
「イきたいんだろ?」
大輔が耳元で息を吐く。
「いや……」
ここでイってしまうのは嫌だと思うけれど、いかんせん身体は言うことを聞いてくれそうもない。
「ここはそう言ってないよ」
大輔も手を緩めてはくれない。
「でも、でも、このままじゃ……」
大輔の洋服を汚してしまう。けれど、脱ごうにも陸にはそこまで余裕は無かった。
「いいよ」
大輔が身体を揺らしてくる。
「あ、だめっ……っ」
加えられた刺激にこらえ切れなくて、弾けた体は熱を放った。
「あ……」
開放感と共に感じた愉悦に身体はまるごと包まれていた。